WORK EPISODE 仕事エピソード

プロジェクトストーリー

製品に対し、情熱と誇りを持って仕事に取り組む社員の姿を、物語形式でご紹介します。
クライアントの要望を引き出し、提案へ結びつける営業職と、
ノウハウや新しい技術でニーズを形にする開発職それぞれの目線から、
プロジェクトがどう進み、難関を乗り越えていくのかを知ることができます。

photo 営業の仕事

私は、関東を中心に40社ほどの取引先を担当しています。
お客様にとって有益な情報提供を行いながら、顕在ニーズはもちろん、お客様も気づけていないような潜在ニーズの把握に努めています。さらに社内の開発案件や起案書などを常にキャッチアップして参考にしながら、時機を先読みして取引先のニーズに合った提案を行っていくのが役割となります。

スタンダードに代わる新しいコンセプトキャップ「ニュートンキャップ」の誕生

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ある秋、大手食品メーカーのA社を訪問した時のことです。その頃、食品調味料の市場において、新しい機構のキャップを備えた新製品発売が他社から発表され、これまでにない新しい観点で、簡単に開栓できる利便性が市場を大きく賑わしていました。世の中の時流に遅れることがあればすぐに売れ行きに影響が出てしまう、同業界の新製品には最も敏感に反応し、早急に対応策を練らなければいけないのが私たちの使命です。

大切なお客様であるA社に対して新たにどのようなことが提案できるのか、喧々諤々、社内での議論を進め、当社の主力商品であるドレッシング容器のキャップについて、「従来のプルリングタイプに代わる新しいキャップのアイデアがあるんです」と持ちかけました。
プルリングのついた従来型のキャップは、1971年に三笠産業が日本で初めて開発し、世に出した製品です。ドレッシング容器においては、大多数のお客様がこのプルリングを中栓に使用していました。そのため、他社の新しい機構のキャップが業界の「スタンダード」になる可能性を秘めていることは、私たちにとっても脅威です。とは言っても、私たちも手をこまねいていたわけではありません。実は、数年前から新たなキャップの開発に取り組んでいたのでした。新型キャップの話にはA社も強い興味を示してくださり、詳細の情報と共に本格的なご提案を進めることとなりました。

会社に戻るとすぐに、製品開発部のIのもとへと向かいました。彼はお客様の要望をカタチにしていくことができ、私が非常に信頼している開発者です。当社が新たに着手しているそのキャップについて、彼に進捗を確認すると、「試作モデルの段階まで既に開発が進んでいる。」という答えが返ってきました。「図面だけでなく、具体的に機構が理解できる試作品があれば先方の理解も早い。きっとプロジェクト始動への決断も早いはずだ。」そこからすぐに資料を揃え、早速A社の担当者に企画案をご説明に行きました。

ニュートンキャップ※と名付けられたこの新型キャップは、中栓中央に従来のプルリングがなく、上蓋を回すとワンアクションで開栓ができるという画期的なもので、使い勝手は抜群です。A社には私たち以外にも数社から提案があったようですが、シンプルな構造と使いやすさを評価いただき、翌年2月には「是非、これで行きましょう!」と担当者から内定を採りつけることに成功しました。 この時の喜びは本当に計り知れないものでした。

実はここで明かしますと、私はA社には並々ならない思い入れがあったのです。
というのも、1970年代に三笠産業が開発したプルリングタイプのキャップを、一番最初に採用いただいたのがA社だったのです。次世代のスタンダードとなるべく開発したニュートンキャップが、またもA社で最初に採用されことに、深い縁を感じずにはいられません。
キャップを認め、任せてもらえた嬉しさと、「調味料業界を牽引してきた自負を持って、三笠産業が新たなスタンダードを、またこのキャップで創ってみせる。」、私は大きな責任を担う覚悟を決めました。

それから数か月、新製品発売スケジュールの最適時期の検討や、A社内の社内調整など、本格的プロジェクトの始動までにはなかなか至らない日が続きました。

ようやくA社から連絡を受け、正式に契約を交わした時には既に7月下旬。

しかも、翌年春の新製品に新しいキャップを装着し、大々的にPRしたいとのこと。そうなると製品の生産スケジュールから年明けにはニュートンキャップの納品を始めなければなりません。なんと、猶予はたったの半年。開発のIに相談すると「無理を言うな。不可能に決まっているだろう。」とにべない返事が返ってきました。

※注ぎやすい先のとんがったネジキャップのことをとんがりキャップと言います。
「ニュータイプのとんがりキャップ」を略し、「ニュートンキャップ」と名付けました。

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突然のトラブルにも全員で対処するチーム力の発揮

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開発のIからの「無理、無理」とにべない返事。彼がそういうのも当然で、いくら試作が進んでいたとはいえ、通常であればお客様から新たな製品のキャップ開発依頼を受けてから製品販売までは、少なくても1年は必要なのです。営業である私自身も、通常であれば無理難題をお願いしていることは百も承知でした。しかし、「三笠産業のこれから」を見通すと、このプロジェクトは絶対に成功させなければならない大切なチャンスであると信じてやまなかった私の想いを、Iはくみ取ってくれたのでしょう。

最初は首を横に振っていたIですが、「やるしかないよな。どうしたらできるのか、力を合わせてそれをチームで考えよう。」と笑顔を見せながら、さらなる開発に取り掛かってくれました。

その間に、A社の取締役と当社の役員・部長との会合が設けられました。先方の重役が出てくることは通常の取引では滅多にないことで、それだけA社のニュートンキャップへの期待の高さが窺われます。その席で、1970年代にプルリングタイプのキャップを採用していただいた当時のお話や、これからの容器の在り方についての意見交換をさせていただきながら、このプロジェクトを絶対に成功させてみせると心密かに思ったのでした。

それからIと共に、開発や生産技術、生産管理などのメンバーに声をかけ、プロジェクトチームが結成されました。私はプロジェクトリーダーとして、全体の進捗管理を任されることになりました。発売予定時期から遡ってスケジュールを組み、効率的により良い製品を作り上げようという目的から、A社にも協力をお願いし、問題点や課題が発生するとすぐにA社も交えて協議・改善ができる体制を整えました。すぐに回答が得られ、状況が把握できるためA社からも快くご協力をいただき、度々生じる課題をなんとかクリアしながら、かなりのハイペースで開発は進んでいきました。

開発陣や製造チームの並々ならぬ奮闘があり、12月末にはようやく生産の目処が立ったのでした。

正直、完成形を手にするまで、大きな不安と隣り合わせで走ってきたため、仕事納めとなる12月26日、A社の担当者に年末の挨拶を兼ねてその旨を報告した時には、ほっと安堵の気持ちが押し寄せました。

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最後の資料整理を進めていた夕方のこと、奈良工場の生産技術から電話が入ってきました。

「問題が発生しました。」

一瞬、自分の耳を疑いました。あるいは悪い冗談かと思いましたがそうではありません。開栓した時に部品の一部が外れてしまうという、大きな問題が発生していたのでした。最後の金型調整段階で、微妙な誤差を出してしまったようです。1月初旬からの生産開始に向けては、この不具合を今すぐに解決しなければなりません。次の日の新幹線の手配をすると同時に、概要を開発のIにも伝え、奈良工場に向かってもらうように依頼しました。

「わかった。」と返答してくれたIの一言は、私にとって大きな力でした。

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「次代のスタンダード」を市場の常識としていく営業という役割

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突然のトラブルに対応するため、12月29日、朝一の新幹線で奈良工場へと向かいました。工場には、すでに取締役、営業部長、開発のI、さらに技術部、製造部のスタッフと関連部署の全員が集合しており、問題点の確認と対応についての協議が続いていました。具体的な改善策などは技術のメンバーに任せるしかありませんが、お客様との窓口を担っている立場から事態の全体把握に努めました。納期のずれという最悪な事態を想定しつつも、「A社の新製品に欠ける意気込みと、私たちへの厚い信頼に応えるために、製品の品質と納期、いずれも譲るわけにはいきません。」全員に私の気持ちを率直に伝えました。しかし、その時のメンバーの表情や、その後に寸暇を惜しんで作業にあたる姿から、全員が同じ気持ちでいるのが、よくわかりました。

問題のすべてが解決したのは何と12月31日のこと。まだまだ生産ラインの安定稼働などが無事に軌道に乗るまで安心はできないものの、現段階での不具合は全解決に至りました。「普段は好き勝手しているのに、事が起きると全員一丸となる様子はいかにも三笠産業らしいよな。」と誰かが言うと、全員が納得していました。

迎えた大晦日は、さすがに心身ともに疲労感が溢れましたが、清々しい気持ちで一年の節目、正月を迎えることができました。

そして年が明け、奈良工場の生産ラインが無事に動き出し、遂に製品の出荷が始まりました。奈良工場からの「すべて順調」との連絡で、ようやく大きな安心感を得られることができたように思います。

様々な苦労の末、今年3月にA社の新製品が発売されました。バイヤーの評価は高く、売れ行きも好調です。ニュートンキャップの登場は業界でも話題となっており、早速他の食品メーカーからも問い合わせをいただいています。

ニュートンキャップを三笠産業の主力商品に育てるべく、取引先への営業にも思わず力が入ります。生まれたばかりのこの製品を世の中に流通させ、次代のスタンダードとすること、消費者の皆さんの食卓を彩ること、それが私たちが担っている役割です。

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