WORK EPISODE 仕事エピソード

プロジェクトストーリー

製品に対し、情熱と誇りを持って仕事に取り組む社員の姿を、物語形式でご紹介します。
クライアントの要望を引き出し、提案へ結びつける営業職と、
ノウハウや新しい技術でニーズを形にする開発職それぞれの目線から、
プロジェクトがどう進み、難関を乗り越えていくのかを知ることができます。

photo 開発の仕事

製品開発部は、営業の方と協働しながら、製品の企画及び開発、開発品の設計・試作、性能テストを積み重ね、新しく世の中に打ち出していく製品の仕様を決定します。
それだけではなく、製造段階における本金型製作から生産まで、実際に製品が市場に生まれるまでの「モノ作りの全て」に関わります。完成した製品においても満足することなく、常により良い製品を目指して更なる改良を重ねます。製品開発の仕事に「完成(=終わり)」はありません。

「プルリングに代わる新たなキャップ」を世に生み出す準備期間

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1971年に三笠産業が開発したプルリングタイプのキャップは、密閉性に優れており、容易に開栓できる実用性が支持され、ソースやドレッシングなどの液体調味料容器の中栓として多くのメーカーに採用いただいています。すでに製品化から40年以上経過する製品ですが、今でも業界のスタンダードとなっています。

ただ、どんなに優れた製品であっても、現状否定を繰り返し、さらに良いものを開発して世の中に提供することが私たちの役割です。事実、プルリングタイプのキャップでは、「はずしたプルリングに微量の内容物が付着する」、「力の弱いお年寄りや子供たち、あるいは指の太い人には開けにくい」、「プルリングがゴミとなる」などの課題点が指摘されていました。私たちもプルリングの良さは評価しつつも、それらの課題点を少しでも解決し得る新たなキャップを生み出すため、数年前より開発に取り組んでいたのでした。

プルオープン型キャップ
トンガリ型のキャップ
トンガリ型のほうが注ぎやすさに優れている

10月のある日、営業のHから「A社にこれまで開発を重ねてきた新しいキャップを是非提案したい」、と聞かされた時は、自分の子供のような感覚で育て、改良を重ねてきたこのキャップが、いよいよ市場に登場するのだと士気が上がりました。

実は、プルリングのない新型キャップをセールスポイントとした新製品が市場で発売されたため、三笠産業としても、従来のキャップに代わる提案の機会があるのでは、と期待をしていたのです。

私たちが取り組んでいる新型キャップは、ニュータイプのとんがりキャップの略で、ニュートンキャップと名付けられました。

「ワンアクションで誰でも簡単に開栓ができる」、「とんがりキャップで注ぎやすい」、「液だれがしにくく清潔」、「改ざんされにくいため安全」、「シンプルな構造で製造コストを圧迫しない」など、従来のプルリングタイプのキャップの問題点を払拭し、市場の新型キャップ以上の使いやすさと経済性を追求した自信作です。とりあえず、Hには図面と試作品を渡し、A社に最初の提案をしてもらうことにしました。

「評判、とても良かったですよ。」

プレゼンテーションから帰ってきたHの声は明るく、手応えを感じたようでした。10月末には私も同行し、構造の特徴や製造上のメリットなどを説明しながら、改めてA社の要望等のヒアリングを行いました。その後も、幾度も改良作業を続け、完成した試作品をHに渡し、A社へと提案を重ねていたところ、翌年7月末遂にHから「正式に決定です!来週に契約書を交わすことになりました。」という朗報が入りました。

努力が実った喜びが込み上げましたが、次のHからの言葉は衝撃でした。

「新製品の発売が来春、そのため、1月には先方に納品を始めなければいけません。」

Hも私も、これまでの経験から、従来にない新しいキャップであるからこそ、懸念される点を徹底的に解明していく工程に非常に時間を要することは十分に理解していました。

「これは、相当な覚悟で臨まなければ・・・。」緊張感が一気に高まった瞬間でした。

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これまでにない挑戦。納期はわずかに半年という短納期−。

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与えられた期間はわずか半年。現段階ではまだ仕様も固まっておらず、これから試作品を物理的に調べ、設計変更を加えては再度性能テストを行う、そんな地道な作業を何度も繰り返さなければなりません。通常、金型製作だけでも1ヶ月半以上を要すもの、さらには生産機械の改造も必要となってきます。通常だと1年は欲しいところである上、今までにない機構を備えた全くの新製品ですから、納得できる高品質な製品に仕上げること、またどんなに小さくても不備を出すような未熟なものを提供するわけにはいきません。

「無理だ。やはり、もう少し時間が必要だと先方と交渉してほしい」

しかし、営業であるHもそのような時間を要することは百も承知です。

「営業」と「開発」、お客様に良いものを提供したいという思いは同じ、それぞれの譲れない拘りのもと、「実現可能なラインはどこにあるのか」、それを探って定めていくことが必要です。

「A社にとって春の発売は最も力が入る商材ということです。さらに今回の新型キャップがセールスプロモーションの目玉になるのです」

A社にとって、春の新製品発売時期がずれ込んでしまうことのリスクは非常に大きく、それは新型キャップの影響度合いも薄めてしまうことにも繋がるでしょう。

主な工程

幾度もの議論の末、「定められた納期を守ること」―。そのために今からできることに注力することを決断しました。

超えなければならない課題が難しければ難しいほど、やる気が起きるのは開発者の性分です。すぐに、営業、生産管理、技術、製造などの関連部署から組織を横断してメンバーを招集し、プロジェクトチームを編成。役割の確認と工程ごとの課題の洗い出し、スケジュール調整を行ったうえで、定期的にミーティングを開き、意見調整しながら作業を進めていきました。このようなときには、全員の力を結集して相互に補完し合うこと、それこそがプロジェクト完遂を目指すチームである理由だと実感しました。

その間もHが両社の取締役同士の会合をセッティングするなど、内部のみならず、先方を巻き込んだ協力体制を整えてくれました。数々の主要企業を任されているだけのことはあり、プロジェクト完遂に向けて何が必要かを判断し、的確に環境を整える早さ、そのコミュニケーション力はさすがと、このときばかりは感心しました。

また、HがA社の担当者といつでも協議ができるように、情報の共有化を積極的に図ってくれました。その結果、細かな変更の承認や課題への対応にもA社のレスポンスを早くいただけ、また緊密なコミュニケーションのおかげで、先方の意向や要望がよく理解できるというメリットも大きく、開発スピードは加速的に増していきました。

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10月に入ると、A社からキャップの形状や色についての依頼が次々に送られてきました。着色剤や樹脂添加剤の変更、微妙なサイズ修正など、その都度、性能テストは繰り返さなければなりません。チームは休む間もなく、作業に没頭していました。

10月中旬、各部門それぞれの尽力と全員のチームワークで、仕様が9割方確定しました。この段階で、技術部に依頼し、生産段階で使用する本金型の製作に取り掛かってもらいました。試作・テストの結果によっては製作中の本金型も修正が加えられます。通常ではあまりない同時並行での作業になりますが、今までの緊密なやり取りから、これ以降の大きな変更はないと判断しました。これにより大きく時間の短縮が行えました。

その後も、技術部と本金型の最終確認、工場側とは加工工程や生産ライン、検査機の改造箇所のチェックなどを行い、実際にキャップが形となるまでのすべての工程に関わりました。

当初は確信が持てず、間に合わないかもしれない不安との背中合わせでスタートしたプロジェクトでしたが、ここまで信じられないスピードで製作を推し進めることができたのも、A社との信頼のもとに築き上げられた共有体制、各部署との連携があるからこそです。全く見えなかったゴールが見えてきたことで、「納期に間に合いそうだ・・・。」一握りの希望が感じられました。

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新しいキャップの「常識」をこの手で創り世に生み出し続ける、開発という役割

バンドと上蓋を繋ぐ弱化部分が右の様にうまくちぎれずに
バンドが上蓋と一緒に持ち上がる事態が発生

12月29日、問題発生をHからの電話で受けた時、すでに私は休暇を過ごすために実家のある奈良に帰省していました。電話口ではHに少しおどけていましたが、内心はかなり心配していました。

翌日、本社工場に駆けつけ、メンバーから事情を聞くと、弱化部が切れずに封印バンドが上蓋について上がるとのこと。寸法が微妙に異なっているようでした。すぐさま、設計から生産工程にいたるまでの再検証をすると、数日前に最終調整を行った金型に問題が生じていることが分かりました。後の検証が不十分だったようです。「もし、金型に大幅な修正が必要となれば、納期にも影響を及ぼすことになる―」。高い緊張が走りましたが、諦めずにいくつものテストを行った結果、幸いなことに成形条件の変更で対処できることがわかりました。あのときの全員のほっと安堵した表情は忘れられません。

大事に至らずに済みましたが、ここまでいくつもの難題をクリアーしてきたことで慢心が芽生え、心のどこかに隙ができていたのでしょう。気持ちを引き締めて、成形条件の変更による最終テストに臨み、「問題なし」という結果を得ました。

「これで、やっと年が越せるな・・・。」全員で奈良工場を後にした時、関連部署のメンバーはもちろんですが、年末休暇にも関わらず現場に取締役まで来てくれたこと、全部署を上げて、役職に関係なく、いいモノを作りたいという一人ひとりの思いとチームワークの良さ、それが三笠産業の強みだと改めて感じました。

製品の売れ行きは順調で、A社のニュートンキャップに対する評価も高いようです。さっそく、改良に向けての要望も送られてきています。併せて、製品企画部隊でも調査を行いながら、私たちはそれらをもとに、仮説立てと検証を繰り返し、次なる「完成」へと取り組んでいくことになります。

かつて三笠産業が開発したプルリングタイプのキャップが40年もの間、業界のスタンダードとして君臨していたように、10年後20年後、あるいはそれ以降も、あらゆる製品にニュートンキャップが使われるよう改良を重ねて、より使いやすい完成された製品へと近づけて行くことが私たちの使命なのです。ニュートンキャップの本当の評価はまだずっと先のこと。私たちの仕事は今スタートしたばかりと言えます。

そしてニュートンキャップに限らず、これからもずっと、私たちはお客様である食品メーカー様、実際に包装容器を利用する消費者の皆さんが持っている「キャップは○○だろう」という常識の一歩先を行くキャップを新開発していくことが、常に求められています。

三笠産業の製品開発に、終わりはありません。

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